***************** 8月21日の小惑星(3200)Phaethonによる恒星食の観測協力をお願いします! 小惑星(3200)Phaethonは、ふたご座流星群の母天体です。1.4年の公転周期で 黄道面から傾いた細長い楕円軌道を描いて回っています。近日点距離は水星 より太陽に近く、遠日点では小惑星帯まで達し、一公転中にPhaethonの表面 温度が200-1000Kまで変化するという非常に特殊な環境下にあります。 Phaethonは普段は小惑星の顔をしていますが、近日点付近ではダストの放出が 確認されており、活動的小惑星に分類される天体です。Phaethonから、 小惑星2005UD(直径約1km)が分裂したと考えられています。また、Phaethonは、 小惑星帯にある太陽系最大の小惑星(2)Pallasから分裂した可能性もあります。 JAXAはこの興味深いPhaethonの軌道に近づき、フライバイして近接撮像し、 Phaethon周辺のダストや表面地形を調べるミッションを行います。 ミッション名はDESTINY+ (Demonstration and Experiment of Space Technology for INterplanetary voYage, Phaethon fLyby and dUst Science)。 イプシロンロケットで打ち上げ予定です。 DESTINY+計画については次のサイトをご覧ください。 ミッション計画全容 https://destiny.isas.jaxa.jp/ DESTINY+で行うサイエンス http://www.perc.it-chiba.ac.jp/project/destiny-plus/index.html ミッションを成功させるため、実際に探査機による近接撮像が行われる前に 地上から天体を詳しく観測することはとても重要なことです。Phaethonは 2017年12月に地球に接近し、この際に多くの観測が行われました。 測光観測や分光観測からは自転周期(3.6時間)や分光型(B型)が精度よく 求められました。また、アレシボのレーダー観測からはこの天体の3次元 モデルが得られ、PhaethonがRyuguやBennuのような赤道一帯が盛り上がった形 をしていることがわかりました。 しかし、現在までの観測では表面の反射率がよくわかっていません。異なる 観測から求められた天体サイズの推定誤差が大きいのです。この天体の真の 大きさと形を直接知る方法として、小惑星による恒星食の観測があります。  Phaethonの推定直径は4-6kmと小さいため、これまでは恒星の掩蔽を観測する ことは困難でしたが、最近、位置天文衛星ガイアのカタログがリリースされて、 恒星の位置精度が極めて高精度になり、恒星の掩蔽が観測可能なほどに予報の 精度が向上しました。  ビデオレート(1/30秒)で観測してPhaethonの大きさを10%の精度で求める には、掩蔽の継続時間が0.3秒以上、5%の精度で求めるには0.6秒以上必要と なりますが、今年7月29日にアメリカ西部で見られる7等星の食と、8月21日に 日本で見られる12等星の食が注目されています。このうち、8月21日の現象は、 食の継続時間が0.6秒で、現在の予報では、27時45分ころ東北北部(主に青森県) を通ると予報されています。対象星はぎょしゃ座にあり、11.7等星と暗いため、 30cm級の望遠鏡を約20台並べてビデオ観測する必要があると考えられており、 これだけの機材をそろえるために、多くのアマチュア観測者の協力を必要と しています。 観測に協力いただける方は、DESTINY+ サイエンス検討チーム (PhaethonOccult@perc.it-chiba.ac.jp)まで是非ご一報ください。 各観測チームの旅費は支給させていただく予定ですので、ぜひ我々の 観測チームと一緒に観測してください。 DESTINY+ サイエンス検討チームとの合同観測に参加する条件としては、 掩蔽観測の経験のある方で、掩蔽観測機材一式をお持ちの方(今回は11.7等級の 星が絶対時刻精度でビデオレートで撮影できることが必要)です。  詳しい予報や観測計画、観測参加の条件等のお問い合わせは、 PhaethonOccult@perc.it-chiba.ac.jp までお願いいたします。予報は、直前に修正される可能性があります。 ぜひとも多くの観測者のご協力をお願いいたします。 (DESTINY+ サイエンス検討チーム一同) *****************